力強い木組みが大きな屋根を支える構造をそのままにあらわし、さまざまな土壁の表情を見せた、伝統構法の要素が目に見えるショールームのような山小屋です。住まい手は、東京での仕事のある暮しと、田舎で趣味の木工をする暮しの二地域居住をしています。雪深いところでもあり、1階には長靴でそのまま入れる広い土間空間をもうけています。遊び空間にふさわしく、全体にオープンなつくりとなっています。内部空間と設備をシンプルにすることで、5間x4間の大きさで予算2000万円で実現しました。
場所:栃木県
延床面積:99.17㎡
設計:直井建築工房
深い軒を張り出し、のびやかでシンメトリーなデザインの、伝統構法の家のスタンダードな外観です。家づくりで手に入れたい本物の仕事を目指しました。
側面から見たところ。深い軒が、家を陽射しや雨から守ります。ところどころに、梁の木組みを留める鼻栓が見えています。
土壁の塗り見本のようになった、カラフルで楽しい土間空間。冬は雪靴のまま家に入り、室内で防寒着を脱ぎ着したりできますし、薪の出し入れなどにも便利です。
土壁は、使う土によってさまざまな色を表現できますし、鏝の仕上げ方で荒く仕上げることも、塗ったあとで磨きをかけることで表面に鏡のような光沢を持たせたりすることもできます。赤い壁は、ベンガラを混ぜた土を塗ってから磨き上げた「大津磨き」、下の方の土に混ぜ込んだ切り藁が見えているの「荒壁仕上げ」中の二段は違った土の配合による「中塗り仕上げ」です。自然な素材だけでこれだけの幅のある表現ができるのです。
土間からそびえる大黒柱と、大黒柱にささる梁、その梁にかかる梁と、力強く荒々しい木組みがそのままこの家の意匠になっています。大工による大断面木材の木組みです。土間からあがった1階の風呂や洗面エリアは板で小さく囲い、寒くないようにしてあります。
土間にオープンになった1階の板の間に面したキッチン。
2階の板の間。床のところどころに広い面の厚板を組み込んでへんかを持たせました。柱間ごとに違う色の土壁にしました。色が違っていてもうるさくならないのは、自然素材ならではです。
2階から1階を見下ろすとこんな感じです。大黒柱に刺さっている貫がそのまま、2階の手すりとなっています。貫が柱にささるところには、楔が打ってあります。
柱、梁、貫、楔。伝統構法のかごのように編まれた構造がよく分かります。
土間空間の中央を見上げたところ。棟木の真下にある二本の自然木の梁の間に床を渡して、ロフト収納としました。
磨き仕上げの壁、ザラザラした壁、窓から見える外の緑や雪景色が、季節ごとにちがった風景を作ってくれます。夜は裸電球の明かりで、高いところにある磨き仕上げの壁が美しく光ります。
棟木まわりの木組みには、主役級の梁が出そろいます。妻面の高いところにガラスをはめることで、高いところからの採光をしています。