#2 クリのはなし

第2弾は、おいしい実がなる「クリ」のはなし。

基本的なこと

クリ
漢字名
英名Japanese chestnut
学名Castanea crenata
分類Fagaceae - Castanea
ブナ科-クリ属

 秋になるといがいがの実がなることであまりにも有名なクリ。北海道西南部から九州までと日本の広い範囲で分布しています。日本人とクリのかかわりは、縄文時代にまでさかのぼります。たとえば青森県の三内丸遺跡では、直径1m、高さ数十mもの巨大なクリの柱が発掘されています。そのほかの遺跡でも東日本を中心にクリの実の食用利用および木材利用と、食べるだけではなく、建材としても使われていました。

 古来より広く活用されていたクリですが、1940年代に侵入が初記録された外来生物であるクリタマバチによって、甚大な被害が引き起こされました。寄生された樹木は、栄養を奪われ、場合によっては枯れてしまいます。実をとるために栽培しているものだけでなく、自生しているクリの木への被害も大きかったためにクリ材の資源の大幅な減少につながったのではないかと推測されます。その後、クリタマバチ抵抗品種の開発や天敵である"チュウゴクオナガコバチ"を放つこと*で対策が取られていき、被害は減っていきました。

*1972年の日中国交正常化を機に研究が進み、中国に天敵がいることが確認され、1980年代には研究の一環で野外に放ったようです。生物多様性への関心が薄かった当時だからできた対策ですね。

 クリの最大の特長は、タンニン*を多く含み水や虫に極めて強く腐りにくいという点です。鉄道に詳しい人なら良くご存じかと思いますが、その耐久性高さから一時期レールを支える枕木に使われていました。昨今、木製の枕木を原因とした脱線事故が増えたこともあり、コンクリート製への転換が行われています。

*タンニンによって、樹木は細菌やカビ(真菌)から守られています。タンニンは、樹木の辺材(生きている細胞)から心材(死んでいる細胞)に移り変わるところで作られ、蓄えられます。このおかげで、心材は辺材よりも耐久性が高い理由となっているそうです。

建材として

 特徴として、水に強い点・比較的硬い素材のため傷がつきにくい点があげられます。見た目は、製材直後はアイボリーからベージュの薄い色ですが、経年変化やオイル系の塗装により茶色に近づきます。年輪に沿って導管が通る環孔材のため、木目がきれいに見えるので、木目の残るオイル系の塗料と相性がいいです。

 建材としての使用方法は、一般的には土台、梁や大黒柱、フローリングに使われる、と言われています。ただ、広葉樹のため太い良材を手に入れることが難しく、使われることは極めてまれではないでしょうか。エコロジーライフ花+直井建築工房の家づくりでは、過去に化粧柱や梁、フローリングでの使用実績があるほか、家具製作でも用いています。特に、クリのフローリングは多用しており、水回りやイスを使う部屋などにおすすめしています。広葉樹のなかでは、比較的利用頻度の高い樹種です。

クリの使用例

クリのラダーラック

クリのラダーラック

クリ材のみで作ったのラダーラック
※エコロジーライフ花 取り扱い商品
https://ecohana.com/products/chestnut-ladder-rack/

クリの化粧台

クリの化粧台

オーダーメイドした化粧台。
引き出しの底板以外は、すべてクリ材を用いて作っています。
※エコロジーライフ花+直井建築工房で作製した家具

クリの階段

クリの階段

クリの重厚感を活かした仕上がりとなっています。
親板、段板、蹴込板すべてクリ材で作った高級感のある階段になっています。
※エコロジーライフ花+直井建築工房の施工事例

参考文献・サイト

・ 『三内丸山遺跡について』 特別史跡「三内丸山遺跡」 https://sannaimaruyama.pref.aomori.jp/about/iseki/
・ 能城修一, & 佐々木由香. (2014). 遺跡出土植物遺体からみた縄文時代の森林資源利用. 国立歴史民俗博物館研究報告, 187, 15-48.
・ 守屋成一. (2013 年). クリタマバチに対する天敵チュウゴクオナガコバチの導入. 植物防疫, 第67巻, 第 6 号